結婚指輪や婚約指輪として絶大な人気を誇るカルティエ(Cartier)。購入当時は息をのむほど美しく輝いていた指輪も、毎日身につけていれば、生活傷がついたり、輝きが曇ったりしてくるのは避けられません。
「最近、指輪の輝きが鈍くなってきた気がする」
「カルティエのお店で綺麗にしてもらいたいけれど、料金が高そうで怖い」
「クリーニングのためだけにお店に入ってもいいのだろうか」
このような疑問や不安を抱えている方は非常に多いのが現実です。特に、カルティエのようなハイブランドは敷居が高く、具体的なメンテナンス料金が公式サイトでも分かりにくいケースがあるため、二の足を踏んでしまうのも無理はありません。
結論から申し上げますと、カルティエの指輪クリーニング料金は、単なる「汚れ落とし」であれば原則として無料です。しかし、金属についた深い傷を消して新品同様に戻す「ポリッシング(傷消し)」は有料であり、さらに「一生に3回まで」という厳格な回数制限が存在します。
この記事では、多くのユーザーが混同しやすい「無料クリーニング」と「有料ポリッシング」の違いを明確にし、2024年〜2025年の最新料金相場や、資産価値を守るための正しいメンテナンス知識を徹底解説します。
- 店舗での「洗浄・艶出し」は原則無料で行える
- 傷を消す「ポリッシング」は約2万円〜3万円の費用がかかる
- 指輪の寿命を縮めないため、研磨は「生涯で3回」に制限されている
- 安い民間業者を利用すると、将来の公式修理や買取を断られるリスクがある
カルティエ指輪の「クリーニング」と「傷消し」は別物!料金と定義の違い

インターネット上で「カルティエ クリーニング」と検索すると、「無料だった」という声と「2万円かかった」という声が混在しており、混乱した経験はないでしょうか。
この情報の食い違いは、そもそも「何を目的としたメンテナンスか」という定義が、ユーザーとブランド側でズレていることに起因しています。
まずは、あなたが求めているケアが「汚れを落としたい」のか、それとも「傷を消したい」のかを見極めることから始めましょう。この違いが、料金とリスクを決定づける最も重要な要素となります。
輝きが鈍る2つの原因:「汚れ」と「スクラッチ(傷)」
指輪の輝きが失われる原因は、大きく分けて2つあります。専門的な観点からは、これらは全く別の現象であり、対処法も異なります。
- 表面の付着汚れ(Dirtying)
- 原因: 日焼け止め、ハンドクリーム、化粧品、皮脂、埃、料理の油などが指輪の表面や宝石の裏側に付着し、膜を作っている状態です。
- 症状: ダイヤモンドが白く濁って見える、地金(ゴールドやプラチナ)がベタついている、全体的に暗く見える。
- 対処法: 洗浄(クリーニング)。 汚れを洗い流せば、元の輝きが戻ります。
- 金属表面の微細な傷(Scratching)
- 原因: ドアノブを掴む、食器を洗う、荷物を持つといった日常動作における摩擦や衝撃により、金属表面に無数の細かい傷がついている状態です。
- 症状: 洗浄しても金属部分が曇って見える、光が乱反射してピカピカしない、触るとザラつきを感じる。
- 対処法: 研磨(ポリッシング)。 物理的に金属の表面を薄く削り取り、平滑にする必要があります。
一般的にユーザーが「クリーニングしてほしい」と店舗に持ち込む際、この両方の症状が併発していることが多いですが、カルティエの公式サービスではこの2つを明確に区別して扱っています。
【結論】汚れ落としは無料、傷消し(ポリッシング)は約2万円〜
カルティエのアフターサービス体系において、料金構造は以下のように明確に分かれています。
| サービス区分 | サービス名称 | 料金(税込目安) | 目的・内容 |
|---|---|---|---|
| 無料 | 艶出し・洗浄サービス (Shining & Cleaning) | 0円 | 超音波洗浄機による汚れの除去。 表面の浅い変色や微細な傷を整えるバフ掛け。 |
| 有料 | ポリッシングサービス (Polishing) | 約20,000円〜 ※素材・モデルによる | 専用工具による本格的な研磨。 深い傷を消し、鏡面仕上げを施す。 ホワイトゴールドの場合は再メッキを含む。 |
| 有料 | サイズ直し (Resizing) | 約20,000円〜 ※初回無料特典あり | サイズ調整(切断・溶接)。 付帯作業として全体磨きが含まれることが多い。 |
このように、単に「綺麗にしたい」という場合でも、その手段によって料金は0円から数万円まで変動します。「無料だと思って持ち込んだら有料の見積もりを提示された」というケースは、スタッフが診断した結果、「洗浄だけでは綺麗にならず、ポリッシングが必要」と判断された場合に発生します。
【公式】カルティエ店舗でできる「無料クリーニング」の全貌

「タダほど怖いものはない」と思うかもしれませんが、カルティエのようなラグジュアリーブランドにとって、自社製品を美しく使い続けてもらうことはブランド価値の維持に直結します。そのため、日常的なメンテナンスである「クリーニング」は、極めて手厚い無料サービスとして提供されています。
カルティエは入りづらい?【初心者ガイド】見るだけ・服装の疑問という記事でも解説していますが、メンテナンス目的での来店は歓迎されており、決して敷居の高いものではありません。ここでは、無料サービスの具体的な内容を深掘りします。

超音波洗浄と艶出し(Shining)の具体的な作業内容
無料で行われる「艶出し・洗浄サービス」は、単に洗剤で洗うだけではありません。プロフェッショナルな機材と技術が用いられます。
- 超音波洗浄 (Ultrasonic Cleaning):
微細な振動を発生させる専用の液体タンクに指輪を浸します。この振動が「キャビテーション(空洞現象)」と呼ばれる微小な気泡を発生させ、その気泡が弾ける衝撃波によって、ブラシでは届かない爪の隙間、裏側の刻印、宝石の台座の奥に詰まった頑固な汚れを弾き飛ばします。特にダイヤモンドは親油性(油となじみやすい性質)があり、皮脂汚れで輝きを失いやすいため、この洗浄による効果は劇的です。 - 艶出し (Shining Service):
これが「ポリッシング」と混同されやすい工程ですが、似て非なるものです。艶出しは、研磨剤を含まない、あるいは極めて微細な粒子のついた柔らかいバフ(布)を用いて、職人が手作業で表面を拭き上げるように磨きます。
金属を「削る」のではなく、表面のくすみを取り除き「整える」作業に近いため、指輪の形状が変わったり刻印が薄くなったりするリスクがほとんどありません。
予約なしで当日対応可能?所要時間と持ち込みのルール
思い立ったその日にふらっと立ち寄ってクリーニングしてもらえるのか、という点も気になるところです。
- 予約の要否:
基本的にクリーニングのみであれば予約なしで対応可能な店舗が多いです。ただし、土日祝日の混雑時や、クリスマスシーズンなどは待ち時間が発生する可能性があります。確実にスムーズに対応してもらいたい場合は、事前に電話で確認するか、来店予約を入れておくのがスマートです。 - 所要時間:
店舗の混雑状況にもよりますが、早ければ15分〜30分程度で完了します。待ち時間は店内でジュエリーを眺めたり、ソファで提供されるドリンクを楽しみながら過ごすことができます。 - 持ち込み店舗:
購入した店舗でなくても構いません。全国(あるいは全世界)のカルティエ正規ブティックであれば、どこでも同様のサービスを受けることができます。旅行先で立ち寄ってクリーニングを依頼することも可能です。
注意点として、一部の百貨店内のコーナーや、職人が常駐していない小規模なブティックでは、「艶出し」まで当日対応できず、洗浄のみとなる場合や、工房への預かり対応(数週間)となる場合があります。
無料クリーニングだけでどこまで綺麗になるのか
「有料のポリッシングをしなくても、無料クリーニングだけで満足できるのか?」というのが、ユーザーの本音でしょう。
実態として、日常の「くすみ」の8割は、無料クリーニングで解決します。
特にダイヤモンドなどの宝石がついた指輪の場合、輝きがない原因のほとんどは「石の裏側の汚れ」です。超音波洗浄でこの汚れが落ちると、光の屈折率が正常に戻り、購入時のような強い輝き(ブリリアンス)を取り戻します。
地金の小傷については、深いものは残りますが、艶出しによって表面の酸化膜や薄い擦れが解消されるため、肉眼では十分に「ピカピカになった」と感じるレベルまで回復することが多いです。まずは無料で依頼し、それでも傷が気になる場合のみ、有料のポリッシングを検討するというステップを踏むのが、最も賢い利用方法と言えます。
傷を消して新品に!有料「ポリッシングサービス」の料金と3回の制限

無料クリーニングでは消えない深い傷、変形、あるいはホワイトゴールドの変色などが気になる場合は、有料の「ポリッシングサービス」を利用することになります。これは単なるお掃除ではなく、指輪に対する「外科手術」のような本格的な修復作業です。
ポリッシング(新品仕上げ)の料金相場【2024年-2025年最新版】
カルティエのメンテナンス料金は、製品のモデルや素材、状態によって変動するため「要見積もり」とされることが一般的ですが、市場動向や海外の事例、および2024年の価格改定を考慮した目安は以下の通りです。
| モデル・素材 | 料金目安(税込) | 備考 |
|---|---|---|
| ラブリング / トリニティ (YG/PG) | 約20,000円 〜 26,000円 | イエローゴールド、ピンクゴールドは標準的な料金。 |
| ホワイトゴールド製品 (WG) | 約24,000円 〜 32,000円 | 研磨後にロジウムコーティング(再メッキ)が必須となるため、割高になる傾向。 |
| パヴェダイヤ / 特殊モデル | 要見積もり | 石留めの点検や特殊な仕上げが必要なため、さらに高額になる可能性あり。 |
注意: カルティエは2024年にも複数回の製品価格改定(値上げ)を実施しており、カルティエの次の値上げはいつ?の記事でも触れている通り、人件費や材料費の高騰に伴い、サービス料金も上昇トレンドにあります。ネット上の数年前の情報(1万円台など)を鵜呑みにせず、必ず店舗で最新の見積もりを取ることが重要です。

なぜ「一生に3回」までなのか?金属が減る物理的リスク
カルティエ公式サイトやブティックでは、ポリッシングサービスについて「製品の寿命を通じて最大3回まで」(モデルによっては5回等の場合もあるが、一般的に数回)と強く推奨しています。
「お金を払うのだから、何度でも綺麗にしてほしい」と思うかもしれませんが、これには物理的かつ科学的な理由があります。
ポリッシングとは、「傷の深さまで金属の表面を削り落とし、平らにする作業」だからです。
- 地金の目減り: 研磨を行うたびに、指輪の厚みはミクロン単位で薄くなっていきます。頻繁に繰り返すと、指輪のアーム(腕)が痩せて強度が低下し、変形しやすくなります。
- デザインの崩れ: カルティエのジュエリーは、計算し尽くされた曲線やエッジ(角)の美しさが特徴です。過度な研磨は、シャープな角を丸くしてしまったり、均整の取れたプロポーションを崩したりする原因になります。
- 刻印の消失: 指輪の内側には、ブランドロゴ、シリアルナンバー、ホールマーク(純度証明)などの重要な刻印が打たれています。研磨によってこれらが薄くなったり、消えてしまったりすると、真正性の証明が困難になります。
この「3回ルール」は、ブランドが意地悪で制限しているのではなく、「製品としての寿命を全うさせるため」の愛ある制約なのです。したがって、多少の小傷は「愛用してきた歴史」として受け入れ、結婚式への参列や、子供に譲り渡すタイミングなど、ここぞという節目にのみポリッシングを行うのが推奨されます。
ホワイトゴールド(WG)の料金が高くなる「ロジウムメッキ」の秘密
料金表で触れたように、ホワイトゴールド(WG)のメンテナンス料金は、イエローゴールド(YG)やピンクゴールド(PG)に比べて高額になる傾向があります。また、納期も長くかかることが一般的です。
これは、ホワイトゴールド特有の製造プロセスに理由があります。
カルティエのホワイトゴールドがはげる?原因と修理法でも詳しく解説していますが、一般的にジュエリーに使用される18金ホワイトゴールドは、純金(黄色)にパラジウムなどを混ぜて白くしていますが、完全な銀白色ではありません。少しシャンパンゴールドがかった色味をしています。

そのため、仕上げの段階で「ロジウム」というプラチナ族の金属でコーティング(メッキ)を施し、あの眩い白い輝きを出しているのです。
- ポリッシングの工程:
- 表面の傷を削る(この時点で古いロジウムメッキも剥がれ、地金の色が露出する)。
- 平滑に磨き上げる。
- 再度、ロジウムコーティングを施す。
この「再メッキ(Re-finishing)」という追加工程が発生するため、技術料と材料費(ロジウムも極めて高価な貴金属です)が加算され、料金が高くなるのです。ホワイトゴールドの指輪を持つオーナーは、この維持費の高さをあらかじめ理解しておく必要があります。
素材別・モデル別のメンテナンス料金と特有のリスク

「カルティエの指輪」とひと口に言っても、使われている素材(マテリアル)やデザインによって、メンテナンスの難易度やリスクは大きく異なります。
ご自身の指輪がどの素材で作られているかを確認し、それぞれの特性に合わせたケア方針を知っておくことが重要です。
ピンクゴールド(PG):硬度による加工難易度と変色の正体
日本人の肌に馴染みやすく、カルティエでも人気の高いピンクゴールド(PG)。これは金(Au)に銅(Cu)を多く配合することで赤みを出している合金です。
- 変色リスク:
配合されている「銅」は、温泉の硫黄成分や、汗に含まれる酸、化粧品の成分と反応して酸化しやすい性質を持っています。長年使用していると、赤黒く変色したり、逆に色が薄くなったりすることがあります。この変色は表面的なものなので、カルティエの艶出し(Shining)や軽いポリッシングで綺麗に戻せることが多いですが、放置しすぎると深くまで浸透する場合があるため注意が必要です。 - 硬度と割れ:
銅を多く含む合金は、イエローゴールド等に比べて「硬い」のが特徴です。硬いということは、裏を返せば「柔軟性がない(脆い)」ことでもあります。そのため、サイズ直しの際に無理に広げたり縮めたりすると、金属に亀裂(クラック)が入るリスクが高くなります。民間業者の中には、このリスクを避けるためにカルティエのピンクゴールドのサイズ直しを断る店もあるほどです。
プラチナ(Pt950):粘り強い特性とヘラ磨きの職人技術
カルティエのブライダルリング(結婚・婚約指輪)の主力素材であるプラチナ950。純度95%のプラチナは、ゴールドとは全く異なる「粘り気(展延性)」を持っています。
- 傷のつき方:
プラチナに傷がついた場合、金属が削げ落ちて減るのではなく、「金属が移動して盛り上がる」ような形で傷ができることが多いと言われています。 - メンテナンスのメリット:
この粘り強い特性のおかげで、ポリッシングを行った際の地金の目減り(重量の減少)は、ゴールドに比べて比較的少ないとされています。 - 職人の腕が問われる:
粘り気がある分、綺麗な鏡面に仕上げるには「ヘラ磨き」と呼ばれる高度な職人技術が必要です。未熟な職人が磨くと、表面が波打ったり、光沢にムラができたりしやすい素材でもあります。カルティエの正規サービスでは、プラチナの特性を熟知したポリッシャーが担当するため、吸い込まれるような深い輝きが蘇ります。
トリニティリング:3連構造が抱える「摩耗」と研磨の限界
イエロー、ホワイト、ピンクの3本のリングが絡み合った、カルティエの象徴「トリニティリング」。その美しいデザインは、メンテナンスにおいては最大のネックとなります。
- 構造的な宿命:
指につけたり外したりするたびに、3本のリングが互いに擦れ合います。そのため、使用していれば「内側や側面に傷がつくのは当たり前」であり、これを完全に防ぐことは不可能です。 - 研磨の難しさ:
3本が知恵の輪のように繋がっているため、分解して個別に磨くことが困難です(修理内容によってはカシメを外すこともありますが、大掛かりになります)。 - 形状変化のリスク:
カルティエのトリニティリング普段使いマニュアルでも触れている通り、3本のリングは絶妙なバランスで重なり合っています。傷を消そうとして強く研磨しすぎると、それぞれのリングが細くなり、重なり合った時のボリューム感や、指通り(スルスルと動く感触)が変わってしまう恐れがあります。トリニティに関しては、「傷も味わい」と割り切り、過度なポリッシングを控えるのが賢明な判断と言えます。

民間の修理業者なら3,000円?安さの裏にある「資産価値崩壊」の罠

インターネットで「指輪 サイズ直し 激安」「ブランドジュエリー 修理」などと検索すると、3,000円〜5,000円程度で新品仕上げやサイズ直しを請け負う民間の修理業者が多数ヒットします。
カルティエ正規店の約2万円〜という料金と比較すると、1/5以下の価格は非常に魅力的に映るでしょう。納期も「即日〜数日」と早いのが特徴です。
しかし、この「安さ」と「早さ」の裏には、取り返しのつかないリスクが潜んでいます。目先の数千円を節約した結果、数十万円の価値を持つ指輪を「ジャンク品」にしてしまう可能性があるのです。
正規店(約2万)vs 民間業者(約3千円)決定的な違い
まずは、カルティエ公式サービス(カスタマーサービス)と、一般的な民間修理業者(サードパーティ)の違いを比較表で確認しましょう。
| 比較項目 | カルティエ正規サービス (Official) | 民間修理業者 (Third-Party) |
|---|---|---|
| 料金目安 | 高額 (約20,000円〜) | 安価 (3,000円〜8,000円) |
| 納期 | 遅い (2週間〜1ヶ月以上) | 早い (即日〜1週間) |
| 真正性の保証 | 維持される 修理証明書が発行され、ブランド価値が保全される。 | 喪失するリスク大 非正規の加工が入った時点で「改造品」とみなされる場合がある。 |
| 技術基準 | オリジナルを再現 設計図と厳格な基準に基づき、本来の形状(ライン・丸み)を崩さない。 | 職人個人の技量依存 「綺麗に光らせる」ことが優先され、オリジナルの形状が変わってしまうことがある。 |
| 刻印の保護 | 最優先事項 薄くならないよう最大限配慮される。 | リスクあり 研磨により刻印が薄くなる、あるいは消えてしまう事故が散見される。 |
| 将来の対応 | 継続して全ての公式サービスを受けられる。 | 今後、正規店での修理・メンテナンスを拒否される可能性が高い。 |
【警告】刻印が薄くなると「買取不可」になるリスク
指輪の内側にある「Cartier」のロゴ、シリアルナンバー、素材証明の刻印。これらは、その指輪が「本物のカルティエであること」を証明するIDカードのようなものです。
民間業者は、ブランドの刻印の重要性よりも「表面の傷を消して光らせること」を優先する傾向があります。その結果、深い傷を消そうとして削りすぎ、刻印まで一緒に削って薄くしてしまうケースが後を絶ちません。
将来、指輪を手放そうとして買取店に持ち込んだ際、刻印が薄い個体は「偽物の疑いあり」または「過度な研磨歴あり」と判定されます。カルティエ保証書の見方と再発行不可の真実の記事にもあるように、真正性を証明できなければ、買取価格が大幅に減額されるか、最悪の場合は買取不可(0円)となることもあります。数千円の修理代をケチった代償としては、あまりにも大きすぎます。

カルティエ公式のアフターサービスを永久に拒否される可能性
カルティエを含む多くの高級ブランドは、「正規の工房以外で手が加えられた製品」を、一種の「改造品」として扱います。
一度でも民間業者でサイズ直しや強い研磨を行ってしまうと、その後カルティエのブティックに持ち込んでも、「当社の製品としての基準を満たしていないため、修理をお受けできません」と断られるリスクがあります。
これは、万が一の破損時や、将来子供に譲ってサイズ直しをしたいと思った時に、頼れる場所がなくなってしまうことを意味します。「一生モノ」として購入したはずの指輪が、その瞬間に「ただの貴金属の輪」になってしまうのです。
自宅でできるデイリーケアと絶対やってはいけないNG行動

頻繁に店舗に行けない場合や、ポリッシングをするほどではないけれど汚れが気になる場合は、自宅でのセルフケアが有効です。ただし、自己流の誤ったケアは指輪を傷める最大の原因にもなります。
【推奨】中性洗剤と子供用歯ブラシを使った正しい洗浄法
最も安全で、かつ効果的なホームケアは「中性洗剤」を使った洗浄です。高価なキットは必要ありません。
- 準備:
- コップまたはボウル(ぬるま湯を入れる)
- 台所用の中性洗剤(食器用洗剤でOK。酸性・アルカリ性はNG)
- 子供用歯ブラシ(毛先が柔らかいもの)または専用の柔らかいブラシ
- 柔らかい布(眼鏡拭きやセーム革)
- 手順:
- ぬるま湯に中性洗剤を数滴垂らし、指輪を浸します。
- 汚れが浮くまで数分待ちます。
- 歯ブラシで、裏側から石座(石が留まっている部分)の隙間を重点的に、優しくブラッシングします。ゴシゴシ擦る必要はありません。
- 真水で十分にすすぎます(排水溝に流さないよう、洗面器などを使うこと)。
- 柔らかい布で水分を完全に拭き取ります。ドライヤーの熱風は変質の原因になるので避けましょう。
具体的な道具については、【プロが断言】カルティエ指輪クリーニングに必要なもの5選!で紹介していますが、まずは家にあるもので十分対応可能です。

【禁止】研磨剤入りクロスで磨くのは「自殺行為」である理由
ホームセンターや100円ショップで売られている「貴金属磨きクロス(シルバー磨きなど)」には、微細な研磨剤(コンパウンド)が含まれています。
これで指輪を磨くと、確かに黒ずみは取れてピカピカになりますが、それは「自分の手で指輪を削っている」のと同じことです。
特に以下の場合は致命的です。
- ホワイトゴールド: 表面のロジウムコーティングが剥がれ、地金の色ムラが出てしまいます。
- 新品仕上げ直後: せっかく職人が整えた鏡面仕上げに、クロスによる微細な磨き傷(ヘアライン状の傷)をつけてしまい、光沢が曇ってしまいます。
日常のお手入れは、「磨く」のではなく「拭く(汚れを取る)」ことに徹してください。研磨剤を含まないセーム革やマイクロファイバークロスを使用しましょう。
超音波洗浄機や温泉が引き起こす宝石・地金のトラブル
- 家庭用超音波洗浄機:
安価で手に入りますが、知識なく使うのは危険です。エメラルド、オパール、パールなどの有機質や、ひび割れのある宝石は、超音波の振動で割れたり変色したりする恐れがあります。また、パヴェダイヤなどの小さな石が振動で脱落するリスクもあります。 - 温泉・入浴剤:
「ゴールドやプラチナは錆びないから大丈夫」と思っていませんか?
K18ゴールドに含まれる「割金(銅や銀)」は、温泉の硫黄成分と反応して真っ黒に変色することがあります。また、石鹸カスや湯垢が石の裏や刻印の溝に詰まり、衛生面でも良くありません。お風呂に入る時は必ず外す習慣をつけましょう。
【まとめ】カルティエ指輪クリーニング料金は、資産価値を守るための必要経費

この記事では、カルティエの指輪クリーニングの料金体系と、メンテナンスにおける重要な注意点を解説してきました。
記事の要点まとめ
- 無料: 店舗での超音波洗浄と艶出し(Shining)は原則0円。日常の汚れはこれで解決する。
- 有料: 傷を消すポリッシングは約2万円〜3万円。ホワイトゴールドは再メッキが必要で高め。
- 制限: 研磨は金属を削る行為。指輪の寿命を守るため「一生に3回まで」を目安にする。
- リスク: 安易な民間業者の利用は、刻印消失や公式サービス拒否を招き、資産価値をゼロにする恐れがある。
「たかがクリーニングに2万円も払えない」と感じるかもしれません。しかし、カルティエの指輪は、手入れさえ間違えなければ、親から子へと受け継ぐことができる「資産」です。
3,000円の民間業者に出してその価値を失うか、正規の料金を払ってブランドの保証と輝きを守り続けるか。
長い目で見れば、公式サービスを利用することこそが、最もコストパフォーマンスの高い選択と言えるでしょう。
まずは、お近くのカルティエブティックに指輪を持ち込み、無料のクリーニングを依頼してみてください。プロの手によって洗浄されるだけで、見違えるような輝きを取り戻すはずです。
カルティエの指輪クリーニングに関するよくある質問

Q1. カルティエの店舗に行かずに、郵送でクリーニングや修理を依頼できますか?
はい、可能です。近くに店舗がない場合や来店が難しい場合は、カルティエのカスタマーサービスセンターへ郵送して依頼することができます。公式ウェブサイトから申し込むか、電話で問い合わせると「修理キット」の手配などを案内してくれます。
ただし、往復の送料や梱包の手間がかかるため、無料クリーニングのみの依頼よりは、有料修理やサイズ直しで利用する方が一般的です。詳細はカルティエの修理キットは2種類?公式・民間の比較も参考にしてください。

Q2. 保証書(ギャランティカード)がなくてもクリーニングしてもらえますか?
はい、基本的には可能です。カルティエの製品にはシリアルナンバーが刻印されており、データベース上で管理されているため、保証書を持参しなくても店舗で製品自体を確認できればサービスを受けられます。ただし、購入履歴の確認に時間がかかる場合や、並行輸入品などで真正性の判断が難しい場合は、証明書の提示を求められることもあります。スムーズな対応のために、可能であれば持参することをおすすめします。
Q3. 結婚指輪の刻印が薄くなってきましたが、打ち直しはできますか?
状態によります。ポリッシングサービスの際に、薄くなった文字を再度深く刻印し直す(リ・エングレービング)ことができる場合がありますが、指輪の厚みが薄くなりすぎている場合や、デザイン上スペースがない場合は断られることもあります。これは高度な判断が必要となるため、技術者による現物診断(見積もり)が必須です。
Q4. 他店で購入した中古のカルティエ指輪でも、店舗でクリーニングできますか?
はい、対応してもらえます。正規店以外(中古ブランドショップや譲り受けたもの)で購入した製品であっても、それが「本物のカルティエ製品」であれば、正規のメンテナンスサービスを受ける権利があります。ただし、過去に前の持ち主が民間業者で修理や改造を行っていた痕跡が見つかった場合は、サービスを断られる可能性がある点には注意が必要です。

